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ダレーマ訪日記事のこだわりどころ

一応、政治学の研究者として、仕事から帰って、まず手にするのは、ため込んだ古新聞ですが、2月3日の各紙は前日に共同会見したイタリアのダレーマ外相の訪日の記事を載せています。これが各紙の特徴が出ていて面白い。アメリカの閣僚なら大体同じ内容になるはずですが、イタリアとなるとかなり扱いが違います。しかし、今回の記事はどれもイタリアについては重要な内容があり、まずは合格点。

アフガン派遣軍の駐留を政権の「頭痛」と見る朝日は、会見記の前にイタリア情勢をつけて、国際面のトップ。最左派3党が撤退を求めるが、穏健改革派の政権中枢は国際公約として安易に撤退できない、上院で与野党伯仲のなかで政権に緊張感が走っていることを過不足なく書いています。「武力だけでは成果上がらず」というダレーマの言葉も引き出し、この旧共産党出身の外相が、アメリカ国内にもある撤退論を見越していることも活写しています。朝日らしいと言えば言えますが、これで過去2年分くらいのイタリアの撤退論議は凝縮されていて、とても便利な記事です。

これと相当違うのが読売。派兵ぐらいは当たり前というのか、イラクには触れないで会見のうち、左翼民主主義者(読売も他紙同様「左翼民主党」と書いていますが、このこだわりは政治学者以外は理解してくれないでしょう)とマーガレット(この党名は記事になし)が進める大「民主党」構想を中心とした真ん中下の囲み記事。

ダレーマ自身が言ったのか、「9党」からなる政権というのは、他で書いていないと思います。というのは、日本の新聞はよく閣僚名簿だけ見て7党連立と書くのですが、イタリアは多党分裂のため、政務次官のみゲットする政党もいるのです。くわしくは、「やそだ総研」のイタリア政府閣僚ポスト分配表をご覧あれ。「やそだ総研」式では10党と数えるが、うち2党は独立のまま議会内で統一会派なので、9党というのも間違いではない。

http://www31.ocn.ne.jp/~yasodasoken/governoprodianalisi.html

党に近い非議員のみを閣僚に送っている微妙な閣外協力?をしている党もあり、本当に専門家以外には分かりにくい。読売の記事で数え直してくれれば、イタリア認識は深まる。

ただし、小選挙区が「2大ブロックを作り」と書くのはいいとして、「2大政党制に近づいた」というのは事実に反する。「2大ブロック」のそれぞれの中で多党化がとまらず、実は90年代を通して、観察する意味のある有効政党の数は増えているのです。まあ、そこまで記事に求めるのは酷ですが。

ダレーマ訪日は少なくとも、こういう形で普段よく分からないと思われるイタリアの基礎情報を提供したという意味でも成功でした。

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