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史上最大のブラックジョーク

 花火はCG、歌唱の少女は口パク、諸民族の子供はほとんど漢民族、と中国政府による五輪開会式でのイメージ操作が話題になっている。諸民族間の平和と団結が一連の虚偽によって演出されていたとすれば、すごいブラックジョークだ。無論、こういう情報が流れてくる程度には、中国にも事実を重んじる人がいて、中国が北朝鮮のような完璧な統制社会ではないことも分かるが、ここまでの作為的なイメージ操作はあきれるというより、恐ろしい。

 われわれは中国を北朝鮮よりははるかにまともな国と認識しているし、それは間違いではないだろう。しかし、事実よりも祖国にふさわしい虚偽を事実として信じ込む(信じ込ませる)、あるいは実際には信じていなくても信じていると姿勢を示す(示させる)ことのほうが大事というのは、北朝鮮の主体思想と同じ発想である。ヨーロッパで日本人学生を拉致した「よど号」ハイジャック犯たちは、男女ペアになっての秘密工作活動で、自分たちが本当の愛情で結ばれたカップルだという「前史」まで念入りに打ち合わせ、それをあたかも真実であると自分で思うくらいに自己洗脳をしたのである。

 こういうときに、ある民放の記者が、現地の中国人に開会式の虚偽について聞いて、「特に問題ない」という回答を多数得ながら、これが政府の情報管理のもとに置かれた人々の一つの決まった答え方だと十分に認識しないで、あるいは認識しつつも視聴者に十分その点を注意しないで(こうなるともっと悪い)報道しているのは、本当に情けない。実際に、テレビカメラに向かって「問題です」と言ったら、その人がどうなるか、という危険性の意識が希薄なのだろうか。若い記者には冷戦期の記憶もないだろうが、それでも本を読んでそれなりに学べば、想像できたはずだ。

 

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