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やそだゼミで読んだ本、読んでいる本(4)

 国際関係論という間口の広い科目を教えているので、ゼミでは自分の専門ではない本も学生の関心に合わせて読むようにしている。開発や援助に関心のある学生のために、私自身も何らかの説明ができるだろうこと、国連のミレニアム開発目標の理解にも役立つだろうと読んだのが、ジェフリー・サックス『貧困の終焉:2025年までに世界を変える』(早川書房)。NHK-BSハイビジョンの「プレミアム8」のインタビュー番組を録画に取っていたので、参考になるものは多い。ただし、前半は今の学生にはすべてが同時代の経験がない「歴史」で複雑すぎるので、ゼミではミレニアム前後から読み始めた。
Sacks

 援助を考えるのに、ルポなどで伝わってくる現地の人々の状況に感情的に同情してしまうだけでは不十分なので、そもそも経済学者の本流にあって、東欧の経済改革に助言していたサックスの合理的な思考は、頭の整理によい。また、一方で、開発に関わってからのサックスが感じたIMFや世銀への疑問も書かれていて、単なる制度的理解でなく、政治学的理解もできるヒントもある。
 もちろん、現場にいる人にとっては、これでは物足りないし、原則論しか書いていないと感じられるかもしれない。しかし、サックスのような経済学者が出ていかなければ、そもそも経済に関する知識不足で、IMFや世銀には素人扱いされるのではないだろうか。いってみれば、今の日本の民主党がいかに官僚に馬鹿にされずに日本版ポリシー・ユニットを作れるかというときに、こういう人物が要るというよい見本ではないか。
 私の世代は、私たちが学生時代にすでに東欧改革に勤しんでいた若きサックスが、今また途上国の問題に取り組んでいる姿に感動する。あの時代、私たちも報道を通じて、サックス批判を読んで、若い学者が無理をしているという印象を持ったこともなかったわけではなかった。この本は、ボリビア以来、ポーランド、ロシア、インドと世界各地を「往診」してきたサックスの知的自叙伝にもなっている。だから、学生のために読んでいても、教える教師も学問とは何かについて、教えられる本なのだ。
 それにしても、私は学者には向いていないかもしれない。こういう場合、学者なら、ちょっとは批判的に書くべきなのだが、学生の相手をしていると、どうしてもほめるべきところはほめなければという傾きが強くなる。

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