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やそだが授業の参考にした本(1)

 新シリーズです。私が授業をするときに参考にした、自分の専門外で面白かった本を紹介します。
 勤めているのは女子大なので、ジェンダー科目は多数設定されているが、私が全学共通教育(昔の教養課程)で教えている政治学概論でも、必ず一講、ジェンダーの政治学を入れている。得意分野ではないが、学生には必要な話であるし、私も年に1回は考えないといけないと思うし、無知なので逆に調べてみると面白いものである。
 学生にとっては歴史でしかない「中ピ連」(中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合)などにも言及すべきだと思って調べたが、最初なかなかいい本が見つからなかった。しかし、東京堂書店で見つけた、ティアナ・ノーグレン『中絶と避妊の政治学 戦後日本のリプロダクション政策』(青木書店)で、この問題の複雑さがよく理解できた。
Abortion

 この問題を包括的に論じた、アメリカ人研究者の博論だが、歴史に取材した政治学のいい博論の見本のような本だった。日本でなぜ、経済的理由での中絶の合法化が1948年と世界最速といってもよい時点で可能になり、ピル解禁が1999年まで遅れるという、世界から見るとまったく逆の政策ができたかを解明した本だが、種あかしをここですることはせず、面白かった点のみ挙げる。
 まず、印象に残った「そんなことが」という事例は、別件で有名な村上正邦が宗教団体(ここでは名は秘す)の支持を受けた中絶反対の急先鋒で、参議院の委員会で「刑法第212条」と題した反中絶の歌を歌ったこともあるというエピソードだ。
 また、中絶が先行した結果、日本のフェミニストは当初、むしろ中絶の制限が厳しくなることを恐れて、あまりピル解禁を支持していなかった(だから、中ピ連はフェミニストのなかでも浮く)ことも、まさに経路依存で、日本社会が世界とは異なった思考や慣行に染まっていたことを物語る。
 歴研からもちゃんとした論集が出ているようなので、やはりよく勉強しないといけない。でも、授業が終われば、また別の仕事。この問題は、また来年に。

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