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湯浅誠氏を追った二つのドキュメンタリー

 先週、このブログでも感想を書いた日本テレビのドキュメンタリーに続いて、今日のNHKスペシャルも派遣村村長だった湯浅誠氏の内閣府参与としての活動を追っていた。同じテーマについて、より長く取り上げてくれたことで、より詳しく知ることができたが、両局の取材や編集の違いも比較してみることができた。
 どちらもいい番組だったが、敢えて軍配を上げれば、日本テレビのほうがシャープだった。30分という短い時間でメリハリを付けざるを得ず、それが分かりやすくなっていたのだが、公設派遣村の対応にキレて出て行く失業者の姿や、温かいお茶が飲めるポットを置く配慮もできない行政に対し、自ら電気ポットを電気店に買いに行く湯浅氏の姿など、当事者により近い目線で番組が作られていたと思う。
 もちろん、日本テレビの番組では分からなかったディテールを50分番組のNHKが教えてくれたことも多数ある。厚労省と東京都の対応は日テレの番組で明らかだったが、今回、NHKの番組は文科省の消極姿勢も明らかにした。管轄するキャパが1500人のオリンピックセンターを500人分しか貸さず(結局800人余りが来た)、職員が休暇だ、改修工事だ、と使用を渋り、貸した後も、館内放送を使わせないという極めて中途半端な対応。これくらいのことが官僚同士の話し合いでは決まらず、大臣や政務官同士の折衝まで行く、時間の無駄。
 財政難でどの自治体も、生活保護という手段を積極的にPRできない状況。できない理由を長々と述べ、当事者に情報が伝わらなくても、それを不作為だとは思わない官僚体質が明らかになったのは、二つの番組とも共通していた。
 日テレでも公設派遣村終了直前に湯浅氏自身が各室を回り再調査をしていたところが映っていたが、NHKのカメラが捕らえていたのは、このやり直しの再調査では、都や社会福祉団体などから集められた人々の前で、湯浅氏がこのようにやるのだ、と自らやってみせていたことである。まさに、NPOでの実践が行政に示された瞬間だった。しかし、これも、先に行政によって行われていた失業者への相談が、初日には館内放送もされず、生活保護などの将来使える手段が明確に示されない、ただ話を聞くだけに終わっている「相談」も多いことを、調査票そのものをチェックして明らかにした湯浅氏などの地道な作業でできたことであった。この場面をわれわれに伝えてくれたことが今回のNHKの番組の最大の貢献である。

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