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軍事用騾馬(ラバ)

 会社勤めをしていた時、海外の雑誌を読むのに銀座ほど適したところは他になかった。歌舞伎座近くのマガジンハウスの1階には世界の雑誌を一般の人も読めるギャラリーがあった。無料で、カバーしている国も分野も広く、ファッション雑誌だけでなく、イタリアのニュース・マガジン『パノラマ』などまで置いていたから、本当に便利なところだった。過去形で書いたように、これもなくなって、もう何年も経った。
 入手しやすい英語圏の雑誌は、銀座の書店「イエナ」で自分で買うこともあった。この書店も数年前になくなった。筑紫哲也氏も愛読していたという評論誌The Atlanticや、デミ・ムーアの妊婦ヌードがカバーになったVanity Fairなどをここで買ったと思う。最近、日本でもhitomiが写真集とFRIDAYなどで同じことをしていたが、実は彼の地の10数年遅れである。90年代前半のVanity Fairは、本当に勢いがあった。
 今の編集長は別の人らしいが、当時Vanity Fairの敏腕女性編集長だったティナ・ブラウンが、New Yorkerに移ったという話を聞いたことがある。これは格上の伝統ある雑誌に移ったことを意味する。もう何年もこういう雑誌を読んでいないなと、渋谷の書店で、思わず手に取ったNew Yorkerが創刊85周年とあったので、買った。
 さすがに、今も知的なエッセーばかりで売っている雑誌である。思いがけず、読んで面白かったのは、テネシー州で生産している軍事用騾馬(ラバ)に関する記事。雄ロバと雌ウマの交配の一代雑種で繁殖力はない、この動物は、過去にも戦争で使われた。馬のような体格とロバのような頑強さを持つだけでなく、馬のようにたくさんの食糧は要らないのに、かなりの重量の荷物を運ぶ。
 20世紀中葉にはアメリカで進んだ軍の機械化(軍事用ジープ、ヘリコプター)でいったん利用が減るが、山地にあり悪路が多いアフガニスタンで、この時代にまた利用が増えているようだ。
 このように、歴史と現代をつなぎ、しかも文学的味もある記事を読ませる雑誌がまだまだ続くことに、アメリカの知力を侮ってはいけないことを痛感させられる。

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