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ワセダ・リブリ・ムンディの消息

 外国に関心のある方は、このシリーズのうちのどの巻かを必ず手にとったことがあるのではないだろうか。早稲田大学出版部の「Waseda Libri Mundi(ワセダ・リブリ・ムンディ)」、ラテン語で「早稲田の世界の本(複数形)」という意味の名前のシリーズ。主要国の米、英、仏、独、伊、西、スウェーデン、EU、中、韓は、政治、経済、社会の各3冊(EUだけは、国ではないので、系譜、制度と機能、政策と理念の3巻)で、ドイツだけはさらに企業、統一の2巻がつき、ASEAN、APECやオーストリアも各1巻で入っている。イタリアやスペインについては類書が少なく、刊行から10年以上たった今でも、現代のことを勉強するには、もっともいい参考書のはずだ。
 ところが、日本とノルウェーの修交100周年(2005年)を記念して、2004年にノルウェーの3巻本(第36〜38巻)が出て以来、刊行のニュースを聞かない。やめたのかな、と思ったのだが、未発行の第18巻「韓国の社会」、第24巻「イギリスの経済」が出るはずなのに、いっこうに出ない。まあ、研究者には、原稿を遅らせて迷惑をかける人はいるし(全然、他人事ではない)、驚くべきことではないかもしれないが、シリーズ刊行時には、当時の総長が、このシリーズは世界を網羅すると並々ならぬ決意を語っていたはずだ。
 過去の刊行を見ても、6年間も新刊が出ていないことは珍しい。刊行の多かった90年代には、次はどこを出すのだろうと期待して、21世紀に入っても、ノルウェーだけで3巻本を書けるだけの人材がこの国にいることに驚き、また、こういう本を出す早稲田に感心したものだった。ただ、何か変だなと思ったのは、このシリーズの各巻のサブタイトルはみな赤い文字で印刷されていたのに、この3巻だけメインタイトルと同じ黒い文字だったことだ。
 学術書が売れず、出版全般が苦しいという一般的な事情があるので、そのためであれば、仕方がないのだが、出版部のホームページも以前よりシンプルになった気がするし、なぜか、このシリーズの各巻の案内は残っていても、シリーズ全巻リストのような頁に、検索などいろいろ探ってもいっこうにたどりつかないのである。普通、これだけのシリーズだと、シリーズとして大々的に宣伝してもいいはずなのだが、そういう見せ方をしていない。
 このシリーズ以外の個別の文献は出続けているし、面白いモノもあるのだが、以前ここから出ていた学術雑誌も他の出版社に移ったものがある。何か事情がありそうだ。『読書新聞』などの出版業界紙をあまり読まないので、私は事情を知らない。

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