« 奇書『ギリシャ共産党は主張する』 | トップページ | ASEANと死刑 »

やそだゼミで読んだ本、読んでいる本(5)

Superclass
 私は学部の1年生のゼミでは「福祉」を、2年生のゼミでは「グローバリゼーション」をテーマに輪読用のテキストを選んでいる。自分に課している課題は、自分の狭い関心で選ばないことと、「ネヴァー・リピート」、同じ本を次の年に繰り返さないということである。前年度の2年生ゼミで使った、ジャック・アタリ『21世紀の歴史』(林昌宏訳、作品社)は、私自身かなり面白かったので、繰り返したかったが、安易に流れないように、自分自身も常にチャレンジの姿勢で学びたいので、本を変える。
 2年生のゼミはコースを選択した学生が、さらに卒論研究に向けて3年のゼミを決めるための準備だから、社会科学の入門というか、本の読み方は1年生で学んでいるので、社会科学的な関心での情報収集、分析が鍵になる。だから、私はあえてジャーナリスティックな本を選ぶ。
 今回は、デヴィッド・ロスコフ『超・階級(スーパークラス):グローバル・パワー・エリートの実態』(河野純治訳、光文社)を選んだ。ジャーナリストの本だが、著者は商務省高官として国際交渉も行い、大学や財団の研究者としての経験もある。アカデミックなことは期待しないで読み始めたが、序論で、ちゃんとエリート論の古典、ライト・ミルズ『パワー・エリート』(邦訳、東京大学出版会)を踏まえて、その時代とは大きくエリートの姿が変わった現状の叙述と分析を始めている。著者が学んだコロンビア大学での入門的な講読の授業では、ミルズの本は人気テキストだったというから、私がロスコフを選んでも、そんなにおかしくないのではないかと思った。
 この本には、世界を動かすグローバリゼーションのただ中にいる各界の人物が登場するだけでなく、その背後にある組織や社会構造も明らかにしていて、国際情報の収集入門としては、とてもいい本だと思った。学生には、ここに出てくる人物(政財界の大物からアンジェリーナ・ジョリーまで)を調べさせ、毎回2人ずつほど紹介させる。ただし、アメリカ歴代大統領は常識の範囲なので、カット。すべての登場人物について、その人の著書や伝記があれば、日本語の本については、リストを作らせ、ウェブで海外情報を調べさせるために原著の索引を固有名詞の綴りの確認用に渡した。
 しかし、最も重要なのは、こういうエリート層の影響力のもとになっているものは何かを考え、彼らの思考を理解することである。たとえば、この本に出てくる人たちにプライベート・ジェットを使う人が少なくないが、それは必ずしも個人的な贅沢のためではない。その答えは、この本で。

|

« 奇書『ギリシャ共産党は主張する』 | トップページ | ASEANと死刑 »