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中国の死刑がなぜ恐ろしいか

 中国が覚醒剤密輸の日本人に死刑を適用する旨を連絡し、日本から岡田外相や菅副首相が慎重な対応を求めている。世界最大の死刑実施国、中国の刑罰が覚醒剤の所持でも死刑になりうるということも異常だが、このことよりもっと怖いのは、誤って、あるいは意図的に、覚醒剤所持とされれば、われわれの誰もが中国で殺される可能性があることである。
 以前、この頁で、私が子どものころ見て、初めて国家や政治の恐さを知った映画『カプリコン1』について書いたので、繰り返しになるが、この映画では、火星着陸を映像技術で偽装した政府の陰謀を暴くジャーナリストに警察が踏み込み、麻薬を警察が自らその住居に置いて、麻薬所持として逮捕するのである。この映画では、警察が指紋をつけさせるために瓶を持たせたりもしたかもしれない。(この点やや不確か)
 今回、中国で逮捕された人々は、本当に犯罪を犯していたのかもしれない。しかし、だから死刑になっていいと簡単に切り捨てることはできないのである。実はこれは他人事ではない。
 真の意味で法治国家でない国では、誤認逮捕や意図的な逮捕が起きうる。誤認でも捕まったら、その後はまともな扱いは期待できない。中国でなくても、例えば、アメリカ人が中南米の国で誤認逮捕され、アメリカでは考えられないような、人権を無視した劣悪な刑務所に送られ、不当に長い刑期を過ごした例が、CBSのドキュメントで放映されたことがある。国際法は原則、内政不干渉で、特に犯罪人(および、無実でも「犯罪人」とされた人)に対しては、介入は難しい。それどころか、国際的「逆ギレ」であるとして平然と批判される可能性もある。
 アメリカや日本でも死刑判決が出る可能性のある重罪、例えば、殺人なら、自分がしていなくて、国家により意図的に犯人に仕立てられても、偽装する権力側も相当周到に準備しないと、馬脚を現す。しかし、所持の偽装は簡単だ。その物品を本人に触らせたり、実際に吸わせて尿を採取すれば、物証も取れる。さらに、政治犯として裁きたいが、それができない場合でも、単なる薬物使用者として死刑にすることも可能である。だから、恐ろしい。

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