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『昭和天皇論』を読む

 数ヶ月前に出て気になっていた、小林よしのり『昭和天皇論』(幻冬舎)を読む。小林氏をくさすことをリベラル知識人の証明のように思っている人もいるが、私は小林氏の仕事は意義のあるものだと思った。たとえ、そのすべてに同感しなくても、重要な意味のある部分を見逃してはいけない。
 この本には、もっと一般にその意義が知られてよい、二人の碩学の研究も要所で活かされている。それは、参考文献にも掲げられている、豊下楢彦『安保条約の成立』(岩波新書)と、ロバート・D・エルドリッヂ『沖縄問題の起源』(名古屋大学出版会)である。この二著がなければ、安保と沖縄という今日まで続く大問題について、小林氏は説得力ある議論はできなかっただろう。もちろん、お二人が小林氏の仕事をどう思っているかは知らない。ただ、少なくとも、これら信頼のできる文献に当たっている点で、その活用の仕方が正しいかどうかは取りあえず判断を保留しても、多くの保守系文化人の読むに耐えない評論の類とは明らかにレベルが違う作品になっていると思う。
 エルドリッジ先生(阪大で働いていたとき、お目にかかっているので先生と書く)は、奄美諸島、小笠原諸島の返還についても重要な研究を著されている。『奄美返還と日米関係:戦後アメリカの奄美・沖縄占領とアジア戦略』(南方新社)、『硫黄島と小笠原をめぐる日米関係』(同)である。

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