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アントウェルペンと印刷術

 ベルギー旅行の最後に行ったのはアントウェルペン。アントワープ、アンヴェルスのほうが言いやすいが、やはりフラマン語圏だと痛感したことが多々あった。途中の駅の自転車置き場に整然と自転車が止めてあったのもオランダっぽかった。海に近づくにつれて、原発や風力発電用の風車も見る。
 ブリュッセルは両言語地域だが、ワロン語圏の主要都市よりフラマン語圏の諸都市のほうがよほど近い位置にあって、アントウェルペンも40分くらいで着く。駅は地下に何層も掘って巨大な構造物となっているが、地上部分のもともとの駅舎も東京駅を何倍も立派にしたようなものだ。

Station

 ここで美術館に入ってしまえば、また美術観光に終わってしまいそうなので、ルーベンスの大作が幾つもある有名な美術館はあえて次回に回し、まずはルーベンスの家を見る。つまり、絵より制作現場のほうが歴史っぽい。ただ、ここはそんなに心に残ることがなかった。ふーんという感じ。

Rubens

Antwerp1

 その後、広場に出ると、新年の飲み会なのか、人でいっぱいだった。通りのはずれに飲み物を渡しているテントがあって、そこに行列があり、そこから出た人が広場ではしゃいでいるようだ。
 海に出ると、ずっと先に港湾らしきものがあり、ステーン城というかっこいい城が残っている。ここから街に戻り、プランタン=モレトゥス博物館という活版印刷の博物館を見る。これは見た後で世界遺産と知ったが、確かに植字から印刷、版下まで全工程の作業場と機械、器具が残っていて、帳場や学者が滞在した部屋や多くの初期活版印刷本のコレクションもある。もちろん活版印刷の創始はグーテンベルグだが、これだけのものが揃っているところはあまりないらしく、ここも活版印刷の新聞は世界で初めて印刷したらしい。

Moretus_2

 ここを訪れる意味は、ジャック・アタリが『21世紀の歴史』でプランタン(名前の通りフランス人でモレトゥスはその娘婿である)について書いていたように、印刷術は資本主義の発展と密接な関係があり、アントウェルペンが一時、世界経済の中心であったからである。ここは知識人のサロンにもなっていて、その中心がリプシウスという人文主義者なのだが、これが大学以外では知る人の少ない人であり、その意味ではこの博物館は地味な存在である。しかし、だからこそ、逆に歴史を考えさせてくれる、いい博物館だと思った。活字の最も小さなものは、今の技術でもこれ以上小さいのは無理だろうと思わせ、実際、今の文庫本のように小さな紙型にぎっしり文字を積めた本が初期からある。

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