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ナポリ再訪

 9月2日から10日まで、イタリアにいた。目的は論文のネタ集めなのだが、出張続きの夏休みの後に、ローマとミラノで地味な調査だけでは、さすがに精神状態によくない。私費で来ていることもあり、土日には観光もした。
 東京に住む人間にとって1時間や2時間の電車移動は苦にならず、逆に重い荷物を持っていくことを考えると、ローマから特急で1時間40分あれば行けるナポリは、ナポリに特別なこだわりのない人間にとっては、狙いさえ絞れば日帰りもできる。10年前に一通りの観光はしているので、今回は気楽に再訪した。
 ナポリ中央駅もきれいになっていた。しかし、市内のバスや地下鉄に乗るために切符を駅構内のタバッキに買いにいくと、少し行列になっていたが、自分の番が近づいて、小さな店内を見て驚いた。タバッキは名前の通り、タバコやお菓子などを売っているところだが、ここでは、まるで切符売り場のように、強化プラスチック張りのなかに売り子と商品がいるのである。明らかに治安対策だろう。そして、強烈だったのは、店舗の狭い入口の左右両側にそれぞれ、初老と中年の物乞いが切符を買った後の釣り銭狙いで手を出していたことである。北部や中部にも物乞いはいるが、こういうあからさまな位置にはいない。南部に来たな、と思った。
 一応、狙いというか、まだ行っていないところで、これだけはという場所に国立カポディモンテ美術館は入れた。ここでイタリア統一150周年ということで19世紀絵画の特集展示がされているという記事を読んだからである。これは市街からちょっと離れた、バスを乗り継いで行く丘の上にあり、面倒くさくなってタクシーで行くことにした。ビュンビュン飛ばす運転手の車に乗っていくと、ハイウェイや山道をうねって登るようなところで、タクシーでよかったと思った。不便なのか、バスでなくタクシーや自家用車で来ている人が多い気もした。

 Capomini

 ただ、この美術館、日本でも展覧会やったし、確かにイタリアにとって重要なものなのかもしれないが、日本人から見て、これはとピンとくる作品が多くない。もちろん見る人が見れば名画揃いなのだろうが、たとえば、「あ、このラッファエッロの絵は知っている」と思うと、実はそれは同時代に作られた忠実なコピーだったりするのだ。期間限定の19世紀絵画の特別展示も、確かにガリバルディが進軍の合間に水辺で休息している絵とか、王国時代のブルジョワ生活の絵とか、なるほどと思わないわけでもなかったが、まあそうかという感じ。それでも一つ圧倒されたのは、大きなフロアに掲げられた、ルネッサンス期のカール5世やフランソワ1世のイタリアでの戦闘を描いた何枚ものタピスリー、当然ベルギー産である。これは戦闘の細部まで描いてあって、すばらしい。
 しかし、国立美術館というけど、トイレの水回りも結構壊れてるし、ギャラリーとしては好きになれなかったな。帰りはバスで帰ろうかと思ったが、これも本数が少なくて、暑くてたまらず、客を乗せてきたタクシーを拾って、山を下りて、やはりまだ行ってなかった、有名な考古学博物館で降ろしてもらった。

 Archemini_2

 ナポリ考古学博物館には、世界史教科書でお馴染み、アレキサンダー大王を描いたモザイク画がある。これに限らず、モザイク画はどれも素晴らしいものであった。あと、面白かったのはポンペイやエルコラーノで出てきたフレスコ画かな。セックスのいろんな体位を描いたものも有名だ。むかし、古代史の先生が、エルコラーノはポンペイと違い、歓楽と享楽の場、日本でいうと昔の熱海のようなところではなかったかと言っていた。石像の類は多すぎて、見ているうちに、もう許してくれという感じになる。
 もう一カ所くらい行こうと思って、すでに行ったことのあるサン・マルティーノの丘に登った。これは地下鉄の駅から運良くバスを捕まえた。ここからのナポリの海、遠くの山や岬の風景パノラマは絶景である。

 Napolimini_2

 Napolimini2

 博物館は前にも見ていたので、もういいかと思うが、バスがやはり本数が少ない。とにかくカポディモンテにしても、サンマルティーノにしても丘の上に上げるだけ上げて、帰るバスが少なすぎる。団体や市内観光バスは自分の車があるからいいが、個人旅行にはやや不便だ。

 Funicomini

 ただ、登りのバスで、そう遠くないところにフニコラーレ(ケーブルカー)の駅が見えたので、地図を頼りに10分ほど降りていくと、駅があった。これで地下鉄駅近くまで降りられる。ところが、地下鉄駅はなぜか人がまばらで、連絡通路などはガラガラである。ホームで理由が分かった。これも本数が少なく、30〜40分待った。とにかく、効率的に動けないのがナポリである。そして、街中はゴミだらけ。
 帰りの電車に乗ると、10年前と同じ人だと思う、ナポリなまりのおっさんがバケツに飲料を入れて、ナポリ訛りで売りに来た。特急電車には簡易なバールのサービスがあるので、鉄道会社非公認の言ってみれば、無許可販売である。イタリアの駅は改札口がないので、自由に出入りできるので、発車前にこういうことが起きるのだが、ちょっと懐かしかった。

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