「チリの闘い」を見て

「チリの闘い」3部作(90分×3)を見に来た。右派と米国に潰されたアジェンデ左翼政権のチリのドキュメンタリーで、撮影後に監督も軍事政権に捕まるが、フィルムは国外に出ていてセーフという奇跡のような映画。当時のイタリア共産党の危機感はチリの事情が分からないと理解できないが、この映画を数年前に見て感想を熱く語っていたのも、イタリア研究の先輩だった。
 第1部は右派側に注目した映像で、アジェンデ政権に対するありとあらゆる嫌がらせが連発される。それでも労働者のアジェンデ支持は衰えなかった。残った手段が、第2部の軍によるクーデタ。最後にアジェンデが残る大統領宮が空爆されるが、それまでの左派の分裂や混乱も出てきて、見ていて心が痛む。
 朝日の劇評が書くように、この映画の白眉は第3部で、これだけで一つの映画としても見られる。アジェンデの国有化路線を潰すために右派と米国が起こさせるストや買占めとそれに対する労働者の抵抗が、どちらもここまでやるかと見せられる。右派がトラックやバスを止め、工業・農業・小売の経営者団体がストをすると、労働者は工場や農地を占拠、自主管理して、職場には乗り合いで来て生産を続ける。しまいには直販や買占め摘発、「人民商店」までやる。後世のわれわれは彼らがいずれ敗れると知っていても、その健気さに感動する。
 1秒も退屈しない、超弩級の作品だった。

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映画「ほしのふるまち」を見て

 昨日、イオンモール高岡にあるTOHOのシネコンで、映画「ほしのふるまち」を見てきた。とても青くてピュアな青春映画だ。内容は必ずしも富山ローカルではなくて、普遍的な若者の悩みとその克服を等身大で無理なく描いている。その意味で、シンプルな港町である氷見を舞台に選んだのは成功だと思う。海に臨む薮田のバス停は絵になっている。
 実際の富山県は、雪国ゆえの曇天で星が見えない夜も多い。天気がいいときでも「星が降る」ように見えるのは相当山のほうじゃないかな。ただ、昨夜は快晴で、ここ高岡の街中でも北斗七星はクリアに見えたし、楽に50から60くらいの星は確認できた。他の町ではどうなのだろう。
 映画に登場する民宿や喫茶店、予備校などは、ほとんどが実名だった。氷見うどん、氷見カレーの看板もさりげなく登場していた。実際に富山県出身で劇中で一人だけ完璧(やや大げさ?)な富山弁を話す柴田理恵の演じるおばさんが、山下リオ演じるヒロインの渚から受け取るのは、富山の定番料理「ブリ大根」。
 感心したのは「ほしのふるまち」のような派手でない良い映画の配給がよしもとであること。もちろん、トミーズ雅や松之助師匠が出ているが、いい町おこしになると思う。石井富山県知事もいかにもな役で一瞬登場。原作は原秀則の漫画だが、高岡出身の藤子不二雄A氏も応援しているのだろう、協力者の字幕に出ていた。
 私はやはり、このような田舎の18歳が主人公の映画には弱い。都会に出るか田舎に留まるか、親の意志を継ぐか継がないか、都会に出て人が変わるか変わらないか、成功するかしないか、21世紀でも永遠のテーマ。
 映画「ほしのふるまち」http://www.hoshi-full.com/ 東京ではシネマ・ロサで。
(この記事はツイッター・アカウント@yasodahの昨日のツイートをまとめ、加筆修正したものです。)

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Sex and the Congress

 東京メトロポリタンテレビの「松嶋×町山 未公開映画を観るTV」については、前にもここで、偽ドキュメンタリー「C.S.A」(アメリカ連合国:史実に反して南北戦争で南軍が勝った場合、アメリカがどうなっていたかを予測したウソ・ドキュメンタリー)について書いた。この番組は、日本未公開のアメリカの驚くべき内容のドキュメンタリー映画を見せてくれる番組で、最近では、ニューヨークの名門幼稚園お受験の加熱を追った映画を見せてくれた。今回放送の「OUTRAGE」(同じ題名の北野武監督の映画とは無関係)もすごい内容である。
 アメリカの議会にいる、自分がゲイなのに、それを隠してゲイに反対する政治姿勢をとる偽善的な政治家を告発した映画である。特に保守派の共和党員が告発される。つまり、私生活はゲイであろうがなかろうが自由だが、政治家の偽善は許せないという理屈である。
 ただし、アメリカは、確かに共和党を中心にキリスト教保守派に一定の影響力がある国だが、一面やはり、とても自由な国でもあり、この番組にも、ゲイをカミングアウトしながら現在も当選し続けている議員(民主党・バーニー・フランク下院議員、マサチューセッツ第4区選出)や同性愛者団体のロビイストも登場するのが、面白い。
 ここでは、はやりの映画、Sex and the City、SATCのCをCongress(議会)ともじってみたのだが、実は男たちの野望渦巻く政治の街ワシントンだけでなく、the City、つまりニューヨークでも、長く市長(1978-89年)を務めた(1969-77年に下院議員でもあった)エド・コッチが自身ゲイ(市長就任前から知られていた)ながら、ゲイ・バーをつぶしたり、当時「同性愛者の病気」という偏見があったエイズの対策を積極的に行わなかったりした偽善が、映画のなかで明らかにされている。
 

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CBSドキュメント、CATVで放送していた

 3月末に、TBSで水曜深夜に放送していたCBSドキュメント(CBSの60ミニッツを編集して放映)がなくなるのは、日本の外国知識にとって損失だというようなことを書きましたが、ケーブルテレビの「TBSニュースバード」で隔週ながら、水曜午後11時から、TBSのときと同じピーター・バラカン司会で放送されているようです。まだ見ていないのですが、よかった。これで少しは見られる。

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絶対見逃せないキッシンジャー

 絶対見逃したくない、政治外交関係のテレビ番組の備忘録。先日の「時空タイムス」で編集された一部が流れたキッシンジャーのインタビューがまんま見られる。
4/17(土)16:00~16:50、NHK-BS1「アメリカで最も危険な男 ダニエル・エルズバーグの回想(前編)」
4/18(日)同上(後編)
4/20(火)0:00~0:50、NHK-BS1「マーガレット・サッチャー 裏切られた"鉄の女"」
4/23(金)0:00~0:50、NHK-BS1「キッシンジャー アメリカ外交秘話を語る(前編)」
4/24(土)同上(後編)

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「CBSドキュメント」も終了

 TBSが深夜に、CBSニュースのドキュメンタリー番組「60ミニッツ」を編集して流していた「CBSドキュメント」が終了した。ドキュメントの前後にピーター・バラカンが日本人に分かりにくいニュアンスを簡潔に補足しているのも無駄がなかった。時々のアメリカの政治にも影響を与えた力のある番組で、これを日本人が日本で(アメリカの放送の何週後かであったとしても)見られることはとても重要だった。アメリカの本物のジャーナリズムのすごさ、アメリカ人のものの考え方も分かる、すばらしい番組だった。日本語版は1988年、まさに冷戦崩壊の直前に始まり、冷戦後の全期間をこの番組は追ってきた。
 また、必ずしも深刻な政治・社会問題だけでなく、世界のあちこちに取材して、面白い話題も提供してきた。例えば、イタリア関係でも、世界を特別機で飛び回り、ホテルを定宿にする型破りのイタリアの外務大臣デミケリス(90年代初め)を追ったものもあったし、大人になっても結婚せず、実家に留まり母親の世話を受ける息子たち「マンモーニ」を追ったものも面白かった。サルコジ大統領などを、その業績よりも、人柄からアプローチするなど、ニュースで見えないものも見られた。
 民放の苦境から、高価なタレントを使う番組は減るが、ドキュメンタリーや実録ものは増えるという観測もあったが、それらはやはり小さなドキュメンタリーというべきで、60ミニッツは世界的な名声のある大ドキュメンタリー、ドキュメンタリーの教科書だ。
 これは、大損失である。

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湯浅誠氏を追った二つのドキュメンタリー

 先週、このブログでも感想を書いた日本テレビのドキュメンタリーに続いて、今日のNHKスペシャルも派遣村村長だった湯浅誠氏の内閣府参与としての活動を追っていた。同じテーマについて、より長く取り上げてくれたことで、より詳しく知ることができたが、両局の取材や編集の違いも比較してみることができた。
 どちらもいい番組だったが、敢えて軍配を上げれば、日本テレビのほうがシャープだった。30分という短い時間でメリハリを付けざるを得ず、それが分かりやすくなっていたのだが、公設派遣村の対応にキレて出て行く失業者の姿や、温かいお茶が飲めるポットを置く配慮もできない行政に対し、自ら電気ポットを電気店に買いに行く湯浅氏の姿など、当事者により近い目線で番組が作られていたと思う。
 もちろん、日本テレビの番組では分からなかったディテールを50分番組のNHKが教えてくれたことも多数ある。厚労省と東京都の対応は日テレの番組で明らかだったが、今回、NHKの番組は文科省の消極姿勢も明らかにした。管轄するキャパが1500人のオリンピックセンターを500人分しか貸さず(結局800人余りが来た)、職員が休暇だ、改修工事だ、と使用を渋り、貸した後も、館内放送を使わせないという極めて中途半端な対応。これくらいのことが官僚同士の話し合いでは決まらず、大臣や政務官同士の折衝まで行く、時間の無駄。
 財政難でどの自治体も、生活保護という手段を積極的にPRできない状況。できない理由を長々と述べ、当事者に情報が伝わらなくても、それを不作為だとは思わない官僚体質が明らかになったのは、二つの番組とも共通していた。
 日テレでも公設派遣村終了直前に湯浅氏自身が各室を回り再調査をしていたところが映っていたが、NHKのカメラが捕らえていたのは、このやり直しの再調査では、都や社会福祉団体などから集められた人々の前で、湯浅氏がこのようにやるのだ、と自らやってみせていたことである。まさに、NPOでの実践が行政に示された瞬間だった。しかし、これも、先に行政によって行われていた失業者への相談が、初日には館内放送もされず、生活保護などの将来使える手段が明確に示されない、ただ話を聞くだけに終わっている「相談」も多いことを、調査票そのものをチェックして明らかにした湯浅氏などの地道な作業でできたことであった。この場面をわれわれに伝えてくれたことが今回のNHKの番組の最大の貢献である。

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ドキュメンタリーの力

 以前から日曜深夜など、あまりテレビが見られない時間に、民放各局も硬派のドキュメンタリーを組んでいたが、幸か不幸か、テレビ業界もCM減で苦しくなり、高額タレントよりは経費が安いのか、むしろ実録モノは増えている。
 テレビのドキュメンタリーしかできないことはあって、昨夜の日本テレビの湯浅誠氏を追ったドキュメンタリー番組(「NNNドキュメント'10」)も、現場の空気感が伝わってきて、とてもよかった。公設派遣村がうまく機能しなかった原因が、行政が関わることで、行政だけが民間と十分に連繋せず自分たちにできることだけで処理しようとすることにあったことが、よく示されていた。
 公設派遣村を厚労省や東京都が積極的にPRせず、とにかく形だけやることを仕事とし、情報が当事者に伝わらないことに責任を感じないなかで、内閣参与である湯浅氏が書いた文を鳩山首相が読み上げ、You Tubeに載せる。公設派遣村の期間終了後の案内文に、財政難を恐れて、生活保護を積極的に説明に入れようとしない東京都に働きかける湯浅氏。オリンピックセンターに失業者を集めても、各階に温かいお茶を飲めるポットを置くという配慮もできない行政に対し、大晦日に自ら電気店に出向いて電気ポットを1ダースくらい買う湯浅氏。湯浅氏が内閣参与の辞意を示されたのも、よく理解できる番組だった。
 この番組は必ず次の学期に学生に見せる。30分番組で編集すれば25分程度になり、90分以上の授業なら、テレビに安易に委ねず、背景も十分に説明できる。

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眼鏡をかけた滝川クリステル

 トヨタの車、ヴァンガードのCMに出ている滝川クリステルのデイリー・メッセージが、ホームページで見られる。さすが大企業のコマーシャル・サイトだけに、かっこいい構成のページだが、その日々のメッセージのなかに、滝川さんが眼鏡でコメントしているものもあり。私は初見だ。私などは買えない、この高額商品のコンセプトであろう、収入が安定し責任ある立場にいる中年以上の男性の、知的な余暇を過ごすという自己イメージの形成に滝川氏がエールを送るという形である。

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NHKがいちばん、セクシー

 冗談交じりだが、時にアメリカ人の視点から、本質的なモノの見方を教えてくれるデーブ・スペクターも以前語っていたが、NHKの番組が日本では最もかっこいい(セクシー=ブレア英前首相の語法で)ことをしている。
 SPEEDの上原多香子がトルコにベリーダンスを習いに行った1月3日放送の番組は、最後に彼女にベリーダンスを踊らせることでエンターテインメントとしてもよくできていたし、教養番組(指南役のベリーダンスの名手から軍事政権によって一時禁止されたことがあるなどの歴史も引き出している)としても面白い。
 民放でやっていたウルルンごときでは、足下にも及ばないわ。

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