「タモリ俱楽部」が切手をテーマに

 昨夜の「タモリ倶楽部」は切手をテーマにしていた。その面白半分のテーマのこだわり方で実は教育テレビと紙一重の世界にまで行く(古地図を見ながら東京散歩など)雑学マニアにはたまらない番組だが、専門家がベースをちゃんと教えてくれる。
 われわれ郵趣家(一般でいう「切手収集家」のこと、英語でフィラテリストともいう、業界用語)の聖地、切手の博物館(目白駅近く)で鑑定士が「銘版」「カラーマーク」「定常変種」や消印、目打ちなどの郵趣の知識をレクチャーし、どうして郵趣家が記念切手よりも通常切手を集めるか説明していた。銘版が「大蔵省印刷局」から「財務省印刷局」、さらに「国立印刷局」に変わったのは、過去十数年の行政改革の歩みを反映していて面白い。
 そうなのだ。高いレベルの郵趣家は通常切手の複雑な使用例を集めて、場合によっては植民地統治や戦争といった歴史事象までを語るコレクションを作るのである。帝国主義時代、植民地建設の基礎は郵便と鉄道である。こういう場合、まず本国の切手を持ち込み加刷して使用し、やがてその場所専用の切手が出たりする。経由地も複雑で消印もバラエティに富む。戦地の郵便はまた特殊な形をとりやすい。支配が終了したり、占領国が代われば過渡期にはいろいろ変わった通信が起きる。世界の郵趣家が集めるのは、こうした複雑な使用例(使用済み封筒)なのである。
 だから歴史の知識は必須で、ヨーロッパでは教養ある紳士の趣味である。かつての日本での記念切手の「月に雁」などはまったく表面的なブームでしかなかったのだ。
 もっとも、私自身は貧乏収集家で記念切手しか集めない。私の老後の夢は、集めたヨーロッパ諸国の人物・歴史題材の切手でヨーロッパの人名辞典を作ることである。

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2009年の記念行事(4)イタリア編

 昨日、ようやく来年2009年の記念切手発行計画が明らかに。そこにはイタリア政治研究者待望の二人が。

ルイジ・ストゥルツォ師(キリスト教民主党の前身、人民党創始者)没後50年(10月発行、日は未定)

ノルベルト・ボッビオ(政治学者、終身上院議員、2004年没)生誕100年(10月16日発行)

なお、イタリアでもダーウィン生誕200周年記念(2月12日発行)が出ます。

ボッビオは私たちにとって神のような存在です。邦訳『イタリア・イデオロギー』(馬場康雄・押場靖史訳、上村忠男解説、未來社)を読まずして、イタリア政治は語れません。

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2009年の記念行事(3)

 2009年の切手発行計画から分かる、歴史的記念行事。今回はヨーロッパに限定せず。

(国連)ウ・タント(国連事務総長)生誕100年

(日本)日本オーストリア交流年2009、日本ハンガリー交流年2009(どちらも10月16日発行)
 まるでハプスブルク復活のような共同発行。

(アメリカ)オレゴン州昇格60年
 エドガー・アラン・ポー生誕200年(江戸川乱歩の名前のルーツになり、シャーロック・ホームズ作者のコナン・ドイルにも影響を与えた作家)

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2009年の記念行事(2)イギリスなど

 前項に続き、ヨーロッパ諸国の切手発行計画から分かる、2009年の記念行事。

(イギリス)ダーウィン生誕200周年(2月12日発行)

 ブリッティッシュ・デザインの名品(ミニ・スカート、赤い公衆電話ボックス、オースチン・ミニ、コンコルド、ペンギン・ブックス、地下鉄路線地図、2階建てバスなど、1月13日発行)
 そういえば、日本にミニ・スカートを伝えたモデルのツィッギーもイギリス人。

 産業革命のパイオニアたち(図案未定、3月17日発行)

(ブルガリア)NATO(北大西洋条約機構)60周年

(リトアニア)ヴィルニュス(ヨーロッパ文化首都)

       リトアニア(国名の初出)1000周年

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2009年の記念行事(1)

 私の趣味は切手収集です。「わー、根暗。」「オタク?気持ち悪い!」そういう声は無視して、でも弁解すると、ヨーロッパでは、大人の趣味なのです。フィンランドのアニメ「ムーミン」にも哲学者で切手収集家のキャラがいましたよね。とてもヨーロピアンな趣味なのです。たぶん、日本では高度成長期にブームになった際に、子どもや投資目当ての大人の収集が目立ったために、そういう偏見があるでしょう。

 実は、私の場合、仕事にも無関係でなく、毎年、この頃に発表される各国の記念切手発行計画を見ると、来年は歴史的記念行事として何があるか、分かるのです。今回はヴァティカン市国(ローマ教皇庁)の計画から全ヨーロッパ的に面白いものを。

 ヴァティカン市国成立80周年

 ハイドン没後200周年

 ヘンデル没後250周年

 メンデルスゾーン誕生200周年

 第2ヴァティカン公会議召集50周年(開会は1962年、世界規模の大会議なので、ヨハネ23世による召集から準備に2年以上を費やした)

  

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切手のシール化が止まらない

誤った民営化で今日では、フレーム切手に自分の写真を入れて送ることもできます。エヴァンゲリオン切手に続き、8月の世界陸上では現役の室伏選手や池田選手の図案が発行されます。

伝統が感じられる、よい図案を発行してきたフランスでも、過日ハリー・ポッター切手(発行目的は「切手祭り」でしたが)が発行され、ヨーロッパもその例外ではありません。

いろいろな図案が出るのはいいこと、というふうに肯定的にばかりは見ることができません。

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ローマ条約50周年記念切手情報

各国の発行情報を「やそだ総研」でご案内しています。

こちらをご覧ください。画像はリンク先にあります。(切手にも著作権があるので)

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私がイギリスや日本を研究対象にしなかった理由

土曜に科研の研究会で東京に行ってきました。イタリアの財政政策について語った翌日の日曜、久しぶりに目白駅近くの「切手の博物館」に行って、中にある郵趣サービス社のショールームで新着の切手を買ってきました。ホームページ「やそだ総研」に掲載したニルデ・ヨッティが図案になったイタリアの女性参政権60周年と制憲議会選挙60周年の切手です。後でアップします。

イタリア研究なんて日本ではマイナーな分野で、なんでもっと世の中に広まったイギリスなどをやらなかったのかと度々思うのですが、その一つの理由に、子供のころ感じた切手発行国としてのイギリスと日本のつまらなさがあります。

この2国、切手発行政策上は共通点が一つあるのです。まず、めったに歴史的事件や人物を題材にしない。イギリスでは4点組みで発行されたチャーチルを例外として、首相クラスでもまず出ません。日本は吉田茂すら出ませんが、少なくとも文化人については、毎年「文化の日」に2~3点出すようになり改善されました。イギリスでは文学上の架空の人物シャーロック・ホームズは5点シリーズで出ましたが、作者コナン・ドイルはない。女流作家は4点セットで出たことがあります。

理由は分からないのですが、おそらくイギリスは立憲君主制で、通貨は全部女王の絵で切手にも片隅に女王のシルエットが入りますから、あまり偏った図像が使えないのは想像できます。間違っても社会主義者の記念切手に女王のシルエットを入れることはできないでしょう。多分、日本は歴史に対する臆病さでしょう。とにかく、判断を避ける、問題になりそうなものは一切やらないという官僚主義ではないでしょうか。

ヨーロッパの大陸諸国、特に共和制の国々は、何を置いてもまず人物、と思うほど発行点数が多い。もちろん、独裁者でない限り、存命中は発行されませんが、切手でフランス文学史も、フランス政治史も簡単に作れます。左翼政権のときに頑張って左翼政治家を発行するという偏向もなきにしもあらずですが、政権交代もありますし、対立陣営でもこれはという人物は必ず発行しますから、ある意味大人の見方ができる。つまり、発行点数が多いから、いろいろなものが発行できてバランスはいつかとれるわけです。

もちろん、発行に迷う例もありますが、今回のイタリアの女性参政権60周年のように、長くイタリア郵政から排除されていきた共産主義者も、ヨッティのように人気のある人は、本人の記念でなく、こういう記念のモチーフとして使うこともできるわけです。

ヨーロッパだけではなく、アメリカも結構歴史を大事にしています。大統領はどんなに人気がなくても死後1年ほどで追悼切手が出ます。ニクソンはウォーターゲート事件で辞任するという不名誉な退場をしましたが、それでも国家国民があるとき、この人に国を委ねたんだという敬意を示してちゃんと発行されました。民主党のクリントンの時期です。日本のように大臣病でなく、法案を作ったことで名を残す名議員のほうが単なる大臣よりも発行の可能性が高いのも、やはり民主政をよく理解している国だと思います。

歴史を解釈することを恐れず、少々の性格の偏りも含めて総合的に人物を判断する、そういう気概と勇気のある国家、国民でありたいものです。

ところで、イギリスのほうはまだポリシーがありますが、最悪の切手発行政策をしたのは日本です。現在「ふるさと切手」という各都道府県レベルで独自のデザインを出す切手がありますが、こんな馬鹿な政策をとる国はほかにありません。こんなことをすると、クオリティーが低くなり、どうでもいい地方的な意匠が多くなるのは目に見えているからです。案の定、人物切手も国の文化人切手にくらべると極端にレベルが低いです。

この政策の責任はだれにあるのか。「ふるさと創生論」という中身のない政策?を出したあの人のせいです。いい意味で国家、国民のプライドは捨てないでほしいものです。

日本郵政に最後に一言。「アニメのキャラクターより実在の人物だろ!」

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